ある会社の総務担当の方が、こんな計算をしていました。
数年前、店舗が増えたタイミングで、評判のいいクラウド型の防犯カメラを入れた。工事もほとんどいらず、初期費用はほぼゼロ。スマホからどの店舗の映像も見られて、はじめは「これは便利だ」と感心していたそうです。ところが先日、経理から回ってきた年間の支払い一覧を見て、手が止まった。カメラの月額が、台数ぶんだけ、毎月きっちり引き落とされ続けている。台数を数えて、年数を掛けて、ようやく総額が見えてきた——「これ、あと何年払うんだっけ?」。
クラウド監視カメラは、入口がとても優しいサービスです。だからこそ、入れてしばらく経ってから「思っていたのと違う」に気づくことがある。コストだけじゃありません。いざという時に画質が足りなかった、回線が落ちていて肝心の場面が録れていなかった、映像がどこのサーバにあるのか、実はよく分かっていなかった。
掘り下げたいのは、その「あとから効いてくる」ところです。クラウド監視カメラのデメリットが集まりやすい、コスト・画質(解像度)・セキュリティの3つ。読み終わるころには、自社にクラウドが合うのか、それとも別の形が合うのか、判断する材料がそろっているはずです。最後に紹介する「映像は手元に置いて、必要なときだけ外から見る」という選び方も、その材料のひとつになります。
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そもそも、なぜクラウド監視カメラはここまで広まったのか
クラウド監視カメラがここ数年で一気に広まったのには、はっきりした理由があります。いちばん大きいのは、レコーダー(録画機)やサーバーを現地に置かなくていいこと。具体的には、こんなところが評価されています。
- 初期費用が安く、導入が手軽。録画機やハードディスクを買わなくていいので、最初の出費が小さい。配線工事も最小限で、カメラとネット環境があればすぐ動きます。
- どこからでも、複数人で見られる。本社からでも自宅からでも、スマホ・PCで各拠点の映像を確認できる。チェーン店や多拠点の会社とは、相性がいい。
- 機器が盗まれても・壊れても、映像は残る。現地のカメラや録画機が破壊されたり被災したりしても、映像はクラウド側にある。これはローカル保存にはない安心です。
- 保守がいらない。機器のメンテナンスやソフトの更新を、サービス側が引き受けてくれる。
ここまでは、まぎれもない事実です。「だったらクラウドでいいじゃないか」と思うかもしれません。問題は、ここから先。台数が増え、運用が長くなり、画質や保存日数に本気で向き合いはじめたときに、別の景色が見えてきます。
【コスト】月額は“安く見える”。でも、止まらない
クラウドカメラのコストでいちばん誤解されやすいのが、「月額が安い」という入口の印象です。1台あたり月に千円〜数千円。確かに、その瞬間だけ見れば安い。でも、防犯カメラは1台で終わる買い物ではないし、1年で終わる契約でもありません。
台数 × 保存日数 × 年数で、積み上がっていく

クラウド録画は、映像をサービス事業者のサーバに預ける仕組みです。だから、預けている限り、保管料としての月額が発生し続けます。料金は基本的に「カメラ台数 × 保存日数」で決まるので、台数を増やせば月額もそのぶん増える。買い切りの機器のように「払い終わったら自分のもの」という地点が、訪れにくいんです。
数字で見てみましょう。あるメーカーの解説では、クラウドサーバの利用料はおおむね月に数千円で、カメラ10台で月額2〜3万円ほど、と紹介されています。仮に月2.5万円として、5年(60か月)使えば、録画の保管だけで150万円。機器代や工事費、通信費は、これとは別です。クラウドの大手メーカー自身も、「利用期間が長いほど、台数が多いほど、トータルのコストはかさむ」と認めています。
「長く残したい」ほど高くなる
もうひとつ、見落としやすいのが保存日数です。クラウドはサーバの保管容量がそのままコストになるので、保存日数を延ばすプランほど、月額がはっきり上がっていきます。トラブル対応や監査の都合で「90日」「1年」と長く残したい現場ほど、月額は重くなる。あるクラウド録画サービスの公開料金では、7日保存と1年保存とで、1台あたりの月額が5倍以上に開く例もあります。長く残したいのに、長く残すほど高い。ここはジレンマになりやすいところです。
やめづらいし、やめたら消える
そして契約の出口も、案外せまい。機器代を月額に含めるタイプのプランだと、最低利用期間(たとえば24か月)が設定されていて、途中でやめれば解約金。プランの途中変更がきかないこともあります。
さらに、これが地味に痛いところ。解約すると、預けていた映像はサーバから消えます。あるサービスでは、契約終了の翌月に録画データが削除され、後から取り出せなくなると案内されています(解約前に手元へダウンロードする手段はありますが、退避できる時間に上限が設けられている例もあります)。数年ぶん払い続けても、やめた瞬間に手元には何も残らない。乗り換えたくても、過去の映像を持ち出しにくい構造になりやすいわけです。
正直なところ、「月額が安い」は嘘じゃありません。でもその安さは、払い続けることと、やめたら消えることとワンセットなんです。そこを外して計算すると、たいてい後で帳尻が合わなくなります。
【画質・解像度】クラウドの画質は、“回線”が決めてしまう
防犯カメラは、いざという時に「顔が読めるか」「ナンバーが判別できるか」で価値が決まります。ところがクラウド型は、その肝心の画質を、カメラの性能ではなく回線が決めてしまう構造を抱えています。
上り回線が、画質とコマ数の上限になる
クラウド録画は、カメラの映像をインターネット経由でサーバへ送り続けます。このとき消費する帯域は、フルHD(1080p)30コマ/秒でおよそ2〜5Mbps、4Kになると8〜12Mbpsにもなる、とされています。これを24時間、複数台ぶん、ずっとアップロードし続ける。
つまり、契約している回線の上り速度が、そのまま録画できる画質とコマ数の上限になります。上りが細ければ、解像度を落とすか、コマ数を間引くしかない。例えばモバイル回線の場合、「下りは速いが上りは細い」非対称な設計で、監視映像は上り主体ですから、ここが直撃しやすいんです。
回線が混めば、録画そのものが荒れる
しかもこれは、モニターのカクつきだけの話ではありません。ローカルに溜める仕組みを持たないクラウド構成では、回線が混んだり不安定になったりすると、保存される映像そのものがコマ落ちしたり、解像度が下がったり、細切れになったりすることがあります。後から見返す「証拠」の品質に、回線の調子が混ざり込んでしまう。
さらに、ネット回線が切れている間は、そもそも録画されません。侵入やトラブルの瞬間が、たまたま回線の不調と重なったら。いちばん欲しい映像が、まるごと空白になりかねません。
長く・高画質に残すほど、現実は厳しくなる
長期保存ともなると、トレードオフはさらにきつくなります。原画質・高コマ数のまま長期間ためると、データ量も料金も膨らむ。だから運用では、画質を落とす・コマ数を下げる(防犯用途では3〜5コマ/秒に設定されることも珍しくありません)ことで、容量と料金を抑える選択になりがちです。4Kを常時クラウドへ上げ続けるのは、一般的な回線では現実解になりにくく、フルHD以下に落とすか、動きを検知したときだけ録る運用に切り替える、というのがよくある着地です。
ひとつ示唆的なのは、先進的なクラウドカメラ自身が、原本はローカルに置いていることです。たとえばあるクラウドカメラ大手は、フル解像度の映像をカメラ本体に保存し、ふだんはサムネイルや解析データだけを軽く送って、本物の映像は必要なときだけ取りに行く設計を採っています。原本は手元に、外からは必要なときだけ。この後で紹介する考え方と、ほとんど同じです。帯域に画質を握られないための、合理的な答えのひとつなんです。
【セキュリティ】映像を“インターネットに出す”のが前提、という構造
3つめが、いちばん語られないのに、いちばん重い軸かもしれません。クラウドカメラは、自社の施設で撮った映像と音声を、インターネット経由で外部事業者のサーバへ送り、そこに置くのが前提です。これは事故ではなく、方式そのものの設計です。だから、守るべき範囲(攻撃面)が、自社の建物の中で閉じず、外の基盤まで広がります。
ここで大事なのは、「パスワードを強くすれば安全」という運用の話に矮小化しないことです。問題は、映像が外に出ていること自体にある。実際に、世界では次のような出来事が起きています。いずれも一つひとつの事業者の体制の問題であって、クラウドが必ずこうなるという話ではありません。ただ、「外に預ける」構造が現実にどんなリスクを生み得るのか、知っておく価値はあります。
「どこの国のサーバか」も、無視できない
映像をクラウドに置くと、その保管場所の国の法律が及びます。たとえばアメリカのCLOUD Actという法律は、米国を拠点とする事業者に対し、データの保管場所が国内か国外かを問わず、法的手続(令状など)に基づく開示を求め得ると定めています。映像がどの国のどの基盤にあるのか、どの法律が適用されるのかを、利用者の側で選びにくい・把握しにくい。これも「外に預ける」構造に内在する論点です。
国内でも、撮影した映像は個人を識別しうる個人データになり得ます。海外事業者のクラウドに保存する構成では、個人情報保護法の「外国にある第三者への提供」や「外的環境の把握」といった対応が論点になります。自社の管理外で行われる処理を、継続的に把握して住民や取引先に説明する責任が、ずっと残るわけです。
NDAAについてひとこと:監視カメラの「素性」を語るとき、アメリカのNDAA(国防権限法)第889条がよく引き合いに出されます。特定メーカーの監視機器を連邦政府が調達できない、という規定です。ただしこれはアメリカの連邦調達のルールで、日本に直接適用される法律ではありません。とはいえ「映像機器のサプライチェーンの素性を見る」流れは世界的なもので、官公庁・インフラの調達では、外国基盤への常時送信や外国製機器への依存が、審査上の気がかりになりやすいのは事実です。NDAAに関しては、ブログ記事「自治体のAIカメラ、住民に「なぜこれを選んだか」を説明できますか?——国産・NDAA・プライバシーの考え方」もぜひご参照ください。
サービスが止まれば、終われば、巻き込まれる
最後に、可用性と継続性の話を。クラウド型は、閲覧も録画も事業者の基盤と回線に依存します。だから、クラウド側の障害が起きると、複数の拠点が一斉に見られなくなる。2025年には大規模なクラウド障害で、家庭用クラウドカメラが各地で一斉にアクセス不能になり、決定的な瞬間を録り損ねたという報告も出ました。自社では復旧をコントロールできません。
そして、サービス自体が終わるリスクもあります。クラウド録画は、事業者がサービスを続けてくれる限りで機能するもの。採算などの事情で終了が決まれば、期限までに自分で吸い出さない限り、過去の映像を失いかねない。映像という資産の生き死にを、よその会社の経営判断にあずけている。そういう状態でもあるわけです。
では、どうするか|「ローカル保存+外部アクセス」という第三の選択肢

ここまで見てきたコスト・画質・セキュリティの弱点。よく見ると、どれも「映像を外のサーバに常時預ける」という一点から生まれていることに気づきます。月額が積み上がるのも、画質が回線に縛られるのも、映像が外に出てしまうのも、根っこは同じです。
だったら、発想を裏返してみる。映像は手元(ローカル)に保存して、見たいときだけ、外から安全にアクセスする。これが「ローカル保存+外部アクセス」という考え方です。
「クラウドか、オンプレ(現地保存)か」という二択で語られがちですが、本当はその真ん中に、両方の良いとこ取りをする道があります。原本はカメラ本体のSDカードや現地の録画機に高画質で残し、外からの閲覧はVPNや閉域ネットワーク経由で必要なときだけ行う。そうすると、どう変わるか。
- 月額の主因(サーバ保管料)が、原理的に消える。長く残しても、容量の範囲内なら月額が階段状に跳ね上がらない。
- 画質が回線に縛られない。カメラ本来の解像度をそのまま記録できるので、いざという時に「読める」映像が残る。回線が落ちても、現地での録画は続く。
- 映像が外に出ない。閉域・VPNで到達経路を絞れるので、攻撃面そのものを小さくできる。データは自社の中にある。
先ほど触れたように、これは突飛な発想ではありません。クラウドの先進事例ですら、原本はローカルに置いて必要なときだけ取り出す方向に寄せている。「手元に置く」ことの合理性は、業界の設計が裏づけているわけです。
下に、クラウド型と「ローカル保存+外部アクセス」型を、主な軸で並べました。どちらが向いているかは、軸によって分かれます。
| 比較する軸 | クラウド型 | ローカル保存+外部アクセス型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 安い(録画機・HDD不要) | プランにより0円〜選べる |
| 月額の続き方 | 台数×保存日数で継続・増えていく | サーバ保管料が原理的に不要 |
| 5年で見た総額 | 払い続け、やめると映像は消える | 買い切り・譲渡で資産として残せる |
| 映像の置き場所 | 事業者のサーバ(社外・場合により国外) | 自社内(SDカード/現地録画機/閉域) |
| 画質・解像度 | 上り回線と料金が上限を決める | 回線に縛られず原画質を記録 |
| 回線が落ちたら | 録画・閲覧に影響、空白が出ることも | 現地録画は継続 |
| セキュリティ(攻撃面) | 常時ネット接続が前提=広い | 閉域/VPNで経路を限定=狭い |
| やめた後に残るもの | サーバ削除で手元に残らない | 映像も機器も手元に残る |
| 多拠点の一元管理 | 得意(設定だけで完結) | VPN整備は要るが拠点分散でリスク分散 |
| 機器の盗難・被災 | 強い(映像はクラウドに残る) | SD+現地録画+拠点分散で設計対応 |
「初期費用の安さ」「多拠点の手軽さ」「機器が壊れても映像が残る」。この3行は、クラウドの正当な強みです。逆に言えば、長期コスト・画質・データの置き場所・回線非依存を重く見るなら、ローカル保存+外部アクセス型のほうが後悔しにくい。自社がどちらを重く見るか。結局はそこなんです。
当社のAIカメラ・監視カメラ事業について
当社RTCテックソリューションズは、映像ソリューション事業 30年、導入社数 3,000社・10万台以上のノウハウを元にAIカメラ・監視カメラ事業をスタートいたしました。「うちの台数と保存日数だと、クラウドと比べて5年でどれくらい差が出るのか」。そんな試算からでも構いません。クラウド監視カメラのコストや画質、映像の置き場所にお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ。

よくある質問(FAQ)
Q. 結局、クラウド監視カメラはやめたほうがいいですか?
A. 正直に言うと、使い方しだいです。1〜数台で、手軽さや多拠点の一元管理を最優先するなら、クラウドは有力な選択肢。一方で、台数が多い・長期で使う・高画質の証拠を残したい・映像を社外に出したくない、が重いなら、ローカル保存+外部アクセス型のほうが後悔は少ないはずです。
Q. ローカル保存だと、外出先から映像を見られないのでは?
A. 見られます。原本はSDカードや現地の録画機にローカル保存し、外からの閲覧はVPNや閉域ネットワーク経由で行う、という形です。「録画は手元、閲覧は必要なときだけ安全な経路で」と考えていただくと近いです。
Q. SDカード録画だけで、容量は足りますか?
A. 設計しだいで足ります。エッジAIで「必要なシーンを中心に録る」運用にすれば、容量を効率よく使えます。保存したい日数・画質・台数をうかがって、容量設計からご提案します。産業用の高耐久SDの採用や、現地録画機との併用もご相談ください。
Q. クラウドを解約すると、これまでの映像はどうなりますか?
A. 一般的に、解約後はサーバ上の録画が所定の期間で削除され、後から取り出せなくなります。必要な映像は解約前にダウンロードして退避する必要があり、退避できる時間に上限が設けられている場合もあります。ローカル保存なら、映像は手元に残り続けます。
Q. 官公庁やインフラでも使えますか?
A. はい。国産メーカーのカメラを、VPN・閉域・オンプレミスで運用し、映像を外部に出さない構成が可能です。データの置き場所や経路を自社の管理下に置けるため、調達やセキュリティの要件にも整理して回答しやすくなります。
Q. クラウドカメラは、月額が安いと聞きましたが?
A. 1台あたりの月額だけ見れば安いことが多いです。ただ、防犯カメラは台数×年数で積み上がりますし、保存日数を延ばすほど月額も上がります。さらに、解約すると映像が手元に残りません。「単月額の安さ」と「総額・出口」は分けて見るのがおすすめです。台数と保存日数を教えていただければ、5年でどのくらい差が出るかを試算します。
Q. 既存のカメラやネット環境を活かせますか?
A. 現地の状況によります。既存の配線や記録機器を流用できるケースもあれば、屋外の耐環境性能やAI機能の面で入れ替えたほうがよいケースもあります。現地を拝見したうえで、活かせる部分と更新すべき部分を切り分けてご提案します。



