介護施設のAIカメラは「エッジAI」で選ぶ——居室の映像を外に出さず、転倒を見つけて、その場で声をかける

介護施設のAIカメラはエッジAIで選ぶ

深夜2時の見守り。

職員さんが一人、フロアの居室をひとつずつ見て回っています。さっき覗いたときは眠っていた方が、次に行ったときにはベッドの脇で床に座り込んでいる。いつ動いたのか、滑り落ちたのか、自分で降りようとして崩れたのか——見ていないので、わからない。幸い大事には至らなかったけれど、もし発見がもう30分遅れていたら、と思うと背筋が冷える。

夜勤の現場でこういう経験をされた方は、少なくないと思います。人手は限られている。巡視の合間は、どうしても目が届かない。かといって、居室にカメラを付けるのは「監視しているようで気が引ける」「ご家族にどう説明すればいいのか」と、ためらいがある。このジレンマこそが、介護施設のカメラ導入をいちばん難しくしているところです。

転倒や離床をどう拾い、検知したらその場へどう声をかけるか。そして居室のプライバシーを、運用のしくみとしてどう守るか。実はこの両方を支えているのが、「エッジAI」という考え方です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、ここを押さえると、カメラ選びの軸がぶれなくなります。順番にお話しします。

エッジAIって何?——「カメラの中で考える」が、介護と相性がいい理由

エッジAIイメージ

ひとつは、撮った映像をいったんクラウドや別のサーバーに送って、そこでAIが解析する方式。もうひとつが、カメラ本体の中でAIが判定してしまう方式で、これを「エッジAI」と呼びます。エッジ(edge)=端っこ、つまり現場のカメラそのもので考える、というイメージです。国産メーカーのi-PROのAIカメラは、このエッジAIを土台にしています。

「どっちでもいいのでは?」と思われるかもしれません。でも介護施設では、このエッジAIが効いてきます。理由は3つ。

1. プライバシー
居室の生映像を、外に流さずに済む。 いちばん大きいのはこれです。エッジAIなら、「転倒かどうか」の判定も、「顔にモザイクをかける」処理も、カメラの中で完結します。実際、後で出てくるi-PROのAIプライバシーガードは、公式に「カメラ内で人物または顔にモザイク処理を行う」と明記されています。居室という私的な空間の素の映像を、わざわざ外のサーバーに送り続けなくていい。これは、ご本人にもご家族にも説明しやすい安心材料です。

2. その場ですぐ動ける。
クラウドへ送って返事を待つ往復がない分、検知が速い。だから「転倒を検知したら、すぐにその場へ声をかける双方向性音声」までを、途切れさせずにつなげられます。

3. 回線とコストに優しい。 
高画質の映像を24時間クラウドに上げ続ける構成は、回線も費用も重くなりがちです。判定をカメラ側で済ませられれば、そこが軽くなります。

まとめると、介護施設のカメラは「エッジAIで考える」を軸に選ぶと外しません。では、そのエッジAIを載せる土台となるカメラを、シーン別に見ていきましょう。

エッジAIを載せる土台——i-PROの国産AIカメラをシーン別に

カメラは「一番いいやつを全部に付ける」ものではありません。見たい場所ごとに、向いているタイプが違うだけです。介護施設のシーンに沿って、エッジAI対応カメラをご紹介いたします。

居室・共用部(屋内)——広く、低い圧迫感で

居室やホール、食堂、廊下のような屋内は、屋内専用のカメラを選びます。ここで一つ注意。「全方位の耐重塩害モデル(WV-X4576LSなど)」は名前が立派ですが、あれは屋外用です。居室には屋内モデルを合わせます。

  • WV-S4176UX(12MP・屋内・全方位) … 天井に1台で360度を見渡せる全方位カメラ。食堂やホールなど広い共用部を、少ない台数でカバーしたいときの主役です。
  • WV-S4156UX(5MP・屋内・全方位) … 上のモデルの5MP版。中規模の共用部や、そこまで高精細が要らない場所のコスト最適な選択肢です。
  • WV-S2136LUX(2MP・屋内・ドーム) … 廊下や居室の入口など、「この向きをしっかり見たい」場所に向く小型の屋内ドーム。出っ張りが少なく、生活空間になじみます。

出入口(玄関・通用口)——「誰が出入りしたか」をはっきり

徘徊・無断外出への備えとして、出入口は外せません。

  • WV-S1136UX(2MP・屋内・ボックス) … 屋内の受付や通用口を狙い撃つボックス型。
  • WV-S15700-V2LN(8MP・屋外・ハウジング一体) … 玄関まわりの屋外用。高精細で、赤外線照明により夜間も最長50mまで届きます。
  • WV-X15700-V2LN(8MP・屋外・ハウジング一体) … 上位のエッジAIモデル。複数のAIアプリを同時に動かしたい玄関(来訪管理などを重ねたい場合)に。公式仕様で最大9アプリ搭載・4つ同時動作とされています。

駐車場・屋外——広い面と、寄って確認の二段構え

送迎車の出入りや外周の見守りには、屋外の全方位とPTZ(首振りズーム)を組み合わせます。

  • WV-S4576LUX(12MP・屋外・全方位) … 駐車場全体を1台で俯瞰。海沿いの施設なら耐重塩害モデルの WV-X4576LS(12MP)/WV-X4556LS(5MP) を選びます。
  • WV-S65301-Z1(2MP・10倍・屋外・PTZ) … ふだんは広く見て、気になったら寄ってズーム。海沿いなら40倍の耐重塩害PTZ WV-S65340-Z4K も。
  • WV-S25700-V2LN(8MP・屋外・ドーム) … 駐車場の出入口など定点を見るのに。赤外線で夜間も最長50m。

アプリ——カメラに「何を見るか」を載せる

エッジAIのおもしろいところは、カメラという土台に「アプリ」を載せて役割を決められることです。i-PROのAIカメラは、メーカー純正のアプリに加えて、パートナー各社が開発したエッジAIアプリもカメラ本体に載せられます。スマホにアプリを入れて機能を足すのに少し似ています。

ここで、肝心なところで誤解されやすい話を、正直にお伝えしておきます。

「AIカメラなら、転倒したら勝手に知らせてくれるんでしょう?」。よく聞かれます。気持ちはわかります。でも、ここは正確に。

i-PROの純正アプリ「AI動体検知」(WV-XAE200WUX)がとても優秀なのですが、見ているのは「動き」です。具体的には、決めた線を越えた(ラインクロス)、立入禁止エリアに入った(侵入)、一定時間とどまった(滞留)、進む向き、速さ、共連れ——といったパターンを、人・車・二輪を見分けながら拾います。

ここで大事なのが、この一覧に「転倒」は入っていないという点です。人が床に崩れ落ちる、ベッドから起き上がる、といった姿勢の変化は、純正のAI動体検知が標準で見ているものとは別ものなんです。「i-PROのカメラは転倒検知に対応」と一括りにすると、現場で「思っていたのと違う」が起きます。

ではどうするか。転倒・離床・起き上がりの検知は、転倒検知に対応したパートナー製のエッジAIアプリをカメラに載せて実現します。 i-PRO公式のパートナーアプリ一覧にも、こうした見守り・転倒検知系のアプリが掲載されています。i-PRO自身も、介護・福祉施設向けの見守りで外部のAI企業と提携してソリューションを打ち出してきました。そして、これらのアプリもカメラの中(エッジ)で判定が完結します。だから生映像を外に出さずに、転倒を拾える。最初のエッジAIの話に、ちゃんとつながってきます。

もう一つ、居室で主役になるアプリがあります。AIプライバシーガード(WV-XAE201WUX)です。カメラの中で、映った人物や顔にモザイク(または塗り潰し)をかけるエッジAIアプリで、しかもモザイクをかけた映像と、かけていない通常映像を同時に配信できます。これが居室プライバシー設計のかなめになります。

よくある質問(FAQ)

Q. そもそも「エッジAI」だと、映像はどこにも残らないのですか? 
A. エッジAIは「AIの判定をカメラの中で行う」という意味で、録画の有無とは別の話です。録画は別途レコーダー等に残せます。ポイントは、転倒判定やモザイク処理といったAI処理を、生映像を外部に送らずカメラ内で完結できること。居室の映像を外に流したくない介護現場と相性が良いのはこのためです。

Q. i-PROのカメラを買えば、それだけで転倒検知ができますか? 
A. 純正の「AI動体検知(WV-XAE200WUX)」が見ているのは侵入・滞留・ラインクロスなどの「動き」で、転倒という姿勢の変化は含まれません。転倒・離床の検知は、i-PROのカメラに転倒検知対応のエッジAIアプリを組み合わせて実現します。「カメラ+アプリ」の構成で考えてください。

Q. 居室にカメラを置くと、入居者やご家族の同意は必要ですか? 
A. 個人情報保護法は撮影そのものに一律の同意義務を課しているわけではありませんが、居室は私的な空間です。利用目的(見守り・事故防止)をきちんと説明し、ご本人・ご家族の同意をいただくのが安全で、望ましい対応です。本記事のテンプレートをたたき台にしてください。

Q. 映像は何日くらい保存すればいいですか? 
A. 法律で一律に「○日」と決まってはいません。法第22条に基づき、利用目的に必要な範囲で施設が保存期間を定め、不要になったら遅滞なく消去するよう努めます。運用ルールとして「〇日で上書き」を決めておきましょう。

Q. プライバシーガードを使えば、入居者は完全に映らなくなりますか? 
A. カメラ内で人物・顔にモザイクをかけられますが、公式の注意書きにあるとおり、横たわっている・倒れている人にはモザイクがかからないことがあります。ソフトのモザイクだけに頼らず、画角やマスクで「そもそも撮らない」設計と必ず併用してください。

当社のAIカメラ事業について

介護施設のカメラ選びは、「どの型番か」だけでは決まりません。転倒・離床をどう拾い、その場へどう声をかけ、誰が駆けつけるか。そして居室のプライバシーを、画角・マスク・モザイク・掲示・規程まで含めてどう守るか。この両方を、生映像を外に出さないエッジAIでつないでいく——これが、現場で使える見守りの形だと考えています。

当社は、映像ソリューションに30年、3,000社以上の現場とご一緒してきました。この度、AIカメラ事業を立ち上げましたので、介護施設の見守りでお困りでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。