物流業のAIカメラ活用|トラックは構内で何時間待っている? 2024年問題とバース滞留は「見える化」で対策しましょう

物流業のAIカメラ活用

朝、まだ受付が開く前の倉庫の外。ゲートの手前にトラックが1台、また1台と並びはじめます。運転席のドライバーは、エンジンを切って、スマホを眺めたり、伝票を整理したり。荷物は積んだまま、まだ1メートルも動いていません。

この「待っている時間」が、いま物流業のいちばん痛いところになっています。

走っている時間ではありません。着いてから、荷を降ろし終えて出ていくまでの、構内での時間です。ここが長いほどドライバーの拘束時間は延び、規制に引っかかり、結果として「運べる量」そのものが減っていく。これが、いわゆる物流の2024年問題の、いちばん現場に近い顔です。

やっかいなのは、この待ち時間が「なんとなく長い気がする」で語られがちなこと。実際に何時何分に着いて、どのバースに何分いて、いつ出ていったのか。これを即答できる現場は、まだ多くありません。測れていないものは、減らせません。

そこで持ち出したいのが、物流業のAIカメラです。といっても防犯の話ではありません。トラックが構内で何分待っているのかを数字に変える、業務効率のものさしとして使う、という発想です。この記事は、物流倉庫でAIカメラをそう使うための具体的な中身をまとめたものです。バース滞留の測り方と、倉庫のどこにどのi-PRO型番が向くか。少し長くなりますが、お付き合いください。

物流の2024年問題は、結局「待ち時間」の問題だった

バース滞留

まず、何が変わったのかを短く押さえておきます。

2024年4月から、トラックドライバーなど自動車運転の業務にも、時間外労働の上限が適用されました。特別条項付きの労使協定を結んでも、年間960時間を超える時間外労働はできません。

これと同時に、ドライバーの「拘束時間」を定めた改善基準告示も改正・適用されました。ざっくり言うと、こういう中身です。

  • 1日の拘束時間は原則13時間以内、延ばしても最大15時間まで
  • 1か月の拘束時間は原則284時間以内(労使協定で年6か月までは最大310時間)
  • 1年の拘束時間は原則3,300時間以内(同・最大3,400時間)
  • 勤務と勤務の間の休息期間は、継続11時間以上を基本に、9時間を下回らないこと
  • 連続運転は4時間以内(途中で合計30分以上の休憩を入れる)

ここで「拘束時間」という言葉がポイントになります。これは運転している時間だけではありません。待っている時間も、荷を積み降ろししている時間も、ぜんぶ拘束時間に入ります。つまり、構内でドライバーをどれだけ待たせているかが、そのまま規制に効いてくる。

では、その「待ち」はどれくらいあるのか。国の試算では、何も手を打たなければ、営業用トラックの輸送力は2024年度に約14%、2030年度には約34%も足りなくなる可能性があるとされています。ドライバーが急に増えるわけではない以上、いまいる人で「ムダな時間」をどれだけ削れるかの勝負になります。

そのムダの中心が、荷待ちと荷役です。国土交通省の実態調査をもとにした政府の整理では、1運行あたりの荷待ち・荷役などの時間は、合わせておよそ3時間にのぼります。運転していないのに、3時間。

数字をもう少し細かく見てみます。国交省「トラック輸送状況の実態調査結果(令和3年度)」では、荷待ちが発生した運行の荷待ち時間は平均1時間34分でした。同じ調査で、荷待ちのある運行の拘束時間は平均12時間26分、ない運行は10時間38分。その差はおよそ1時間48分で、これは荷待ち時間とほぼ重なります。待たせた分だけ、まるごと拘束時間が伸びている、ということです。

ひとつだけ注意を。この「平均1時間34分」は、あくまで荷待ちが発生した運行に限った平均です(同調査では荷待ちが起きた運行は全体の24%)。全運行をならせばもっと短くなりますが、裏を返せば「待たされるところでは、がっつり待たされている」。荷待ちのある運行のうち、1時間を超えるものが約半分(50.1%)、2時間超も約18%を占めます。

そして2024年問題は、ここで止まりません。改正物流効率化法により、2025年度からはすべての荷主・物流事業者に物流効率化の努力義務(積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役などの時間短縮)が課され、2026年度からは一定規模以上の特定事業者に中長期計画の作成・定期報告などが求められます。国が掲げる目標は、ドライバー1人あたり年間125時間の拘束時間短縮、そして1運行あたりの荷待ち・荷役などを2時間以内に、というものです。

これからは「うちは荷待ちをどれだけ減らしたか」を、説明できる形で持っておく必要が出てきます。減らすには、まず正確に測ることから。その「測る」を自動でやってくれるのが、いまのAIカメラです。

物流倉庫のどこに、どのAIカメラを置くか

物流現場のカメラというと、つい「盗難対策」を思い浮かべます。もちろんそれも大事ですが、ここで主役にしたいのは業務のものさしとしての使い方です。誰が悪いかを探すためではなく、どこで時間が溶けているかを知るために置く。視点が変わると、選ぶ機種も置き場所も変わってきます。

当社がご提案しているのは、国産メーカーのAIカメラです。広い倉庫を全部同じカメラで埋めるのではなく、見たい対象ごとに向いたタイプを割り当てるのがコツ。まず全体像を一枚の表にしておきます。

設置場所推奨i-PRO型番カメラの種類主な用途組み合わせるAIアプリ
ゲートWV-X15700-V2LN4K屋外バレット型(IR最大70m)入庫・出庫の時刻+車両ナンバーの記録AIナンバー認識 ほか
バース・通路WV-S8574LUX/WV-S85702-F3Lマルチセンサー(4眼/2眼・各4K)複数バースを1台で同時、在席(滞留)検知AI動体検知 WV-XAE200WUX
広大なヤードWV-X67700-Z3L34K・光学30倍 ラギッドPTZ(IR)広域の見回し+寄って確認AIオートトラッキング
構内全般上記カメラ+追加学習フォークリフトの識別、放置物・在庫の変化検知AI現場学習/AI状態変化検知 WV-XAE400W

それぞれ、もう少しかみ砕いて見ていきます。

① ゲート:トラックの「入った・出た」を読み取る

狙うのは1点。ナンバーをはっきり残せるバレット型

バース滞留を測る出発点は、ゲートです。トラックがいつ入って、いつ出たのか。この入庫・出庫の時刻を車両ナンバーと一緒に自動で記録できれば、滞留時間の計算は一気に楽になります。

ゲートのように「決まった一点を、遠くまでくっきり」捉えたい場所には、レンズを向けて使うバレット型が向きます。WV-X15700-V2LNは4K(約8MP)の屋外バレット型で、赤外線照明は最大70m。夜間や早朝の入出庫でもナンバーを狙えます。カメラ本体でAI処理を行うエッジAIに対応し、AIアプリを複数同時に動かせるのも利点です。

② バース・通路:1台で複数バースを同時に見る

バースが10本、20本と並ぶ倉庫で、1バースに1台ずつカメラを付けたらどうなるか。台数も配線も、あっという間にふくらみます。ここで効いてくるのがマルチセンサーカメラです。1台の筐体に複数のカメラの目を持ち、それぞれ別の向きを同時に撮れるタイプ。

WV-S8574LUXは4つの目を持ち、各4K(合わせて約33MP)で四方を見渡せます。隣り合う複数バースや、バースと通路を1台でまとめて押さえられるので、カメラの台数とPoEの口、配線距離をまとめて削れるのがいちばんの効きどころ。横長の通路を広くカバーしたいなら、2つの目を持つWV-S85702-F3L(各4K・合計約16MP)も選べます。

③ 広大なヤード:1台で見回し、寄って確かめる

ふだんは広く、気になったら寄れるPTZ

トレーラーが並ぶヤードやコンテナヤードのように、とにかく広い場所には、首を振ってズームできるPTZが向きます。WV-X67700-Z3L3は4K・光学30倍ズームのラギッド(高耐久)PTZで、対象を自動で追いかけるAIオートトラッキングに対応。ワイパーや自動デフロスターも備え、屋外の過酷な環境でも使えます。「ふだんはヤード全体を広く見て、動きがあったら寄って確認」という1台何役もの使い方ができます。

④ AIアプリ:何を「数える・見分ける」か

カメラは「目」、AIアプリは「頭」です。同じカメラでも、載せるアプリで何ができるかが変わります。物流でよく使うものを整理しておきます。

  • AI動体検知(WV-XAE200WUX)……侵入・滞留・通過方向・ライン越え(共連れ=1台ぶんのゲートに2台続けて入るような動きの検知も含む)・速度超過・人数(台数)カウントまで見分けます。人・四輪・二輪を自動で判別できるので、「バースに在席している(=滞留している)」状態の検知に使えます。
  • AI現場学習……標準では人・車・二輪しか見分けられないところに、現場のフォークリフトや作業車を「追加で学習させる」ためのアプリです。これは無料で、対応するエッジAIカメラにあらかじめ入っています(検知の発報自体は上のAI動体検知側で行う、という組み合わせで使います)。
  • AI状態変化検知(WV-XAE400W)……「物がない状態」を基準にして、放置物が置かれた、在庫が欠けた、といった変化を見るアプリです。通路の放置物検知や、棚・置き場の欠品(在庫の有無)検知はこちらの守備範囲になります。
  • AIナンバー認識……ゲートで車両ナンバーを読み取り、入出庫の記録に使います。

ここはよく混同されるので、はっきり分けておきます。フォークリフトを「見分けられるようにする」のがAI現場学習、放置物や在庫の「変化を知らせる」のがAI状態変化検知。役割が別ものです。「現場学習で在庫通知まで全部できる」と説明されることがありますが、正確にはアプリが分かれています。導入時に取り違えると、思っていた機能が動かない、ということになりかねません。

よくある質問(FAQ)

Q. 物流業でAIカメラは、防犯のほかに何に使えますか? 
A. いちばん効くのが、業務のものさしとしての使い方です。物流倉庫のバース滞留時間や荷待ち時間を入庫から出庫まで自動で記録したり、構内のフォークリフトと歩行者の動線を見守って接触リスクを警告したり。2024年問題で「待ち時間をどう減らすか」が問われるなか、まず数字で現状を押さえる道具として役立ちます。

Q. バース滞留時間は、本当にカメラだけで測れるんですか? 
A. 入庫(ゲートでのナンバー読み取り)、バース在席(滞留検知)、出庫(再びゲート)の3点を押さえる構成にすれば、トラックごとの総滞留時間を自動で記録できます。さらに「待っていた時間」と「荷役していた時間」を分けて把握することも可能です。

Q. すでにバース予約システムを入れています。カメラは要らないのでは? 
A. 役割が違います。予約システムは「これから着く車をならす」計画側の仕組みで、AIカメラは「実際に何分かかったか」を記録する実績側の仕組みです。予約どおりに回せているか(予実差)を見るには、両方そろっているほうが効きます。

Q. フォークリフトやかご台車も、ちゃんと見分けられますか? 
A. 標準のAIが見分けるのは人・車・二輪です。フォークリフトのような構内特有の対象は、AI現場学習で追加学習させることで見分けられるようになります。学習画像は10〜200枚程度、100枚で約30分が目安です。現場で撮った写真を使って、その現場仕様に育てていくイメージです。

Q. 通路の放置物や、置き場の在庫(欠品)も通知できますか? 
A. できます。ただしこれはAI現場学習ではなく、AI状態変化検知(WV-XAE400W)というアプリの担当です。「物がない状態」を基準に、放置物が置かれた、在庫が欠けた、といった変化を知らせます。やりたいことに合わせて、どのアプリを載せるかを設計します。

Q. 既存のカメラや配線は使えますか。工事は必要ですか? 
A. 工事不要のワイヤレス対応が可能で、現場を止めずに設置しやすいのが当社の特長です。既存設備をどこまで活かせるかは現場次第なので、まずは現地の状況を見せていただければ、流用の可否を含めてご提案します。

当社のAIカメラ事業について

物流のカメラ選びは、「どの型番か」だけでは決まりません。何を測りたいのか(滞留か、安全か、在庫か)。それをどのアプリで実現するのか。荷主・元請の調達基準を満たせるのか。そして、現場を止めずに付けて、誰が手早く保守するのか。ここまで含めて考えると、失敗がぐっと減ります。

「うちの倉庫は、まずどこから測ればいいのか」そこから一緒に考えます。AIカメラ事業を立ち上げましたので、物流現場の効率や安全でお困りでしたら、どうぞお気軽にご相談くださいませ。