「去年付けたばかりの屋外カメラが、もう映りがおかしい」。
海沿いの施設や、冬に融雪剤を撒く道路沿いの現場で、こんな声をよく聞きます。最初はきれいに映っていたのに、1〜2年でレンズの前が白く曇り、金具に錆が浮き、いつのまにか映像が途切れる。盗難や事故が起きたときに限って、肝心の映像が残っていない。
理由はだいたい一つです。塩です。
潮風や融雪剤に含まれる塩分は、私たちが思っているよりずっと手強い相手で、ふつうの屋外カメラ(防水だから大丈夫と思って選んだもの)を、想像より早くダメにします。そして厄介なことに、塩害は「壊れてから気づく」ものです。
この記事では、なぜ海の近くのカメラは早く傷むのか、そして「塩害に強いカメラ」を選ぶときに何を見ればいいのかを、現場の目線で整理します。後半では、実際にどの型番を選べばいいのか、そしてカメラ以外の塩害対策まで具体的に挙げていきます。「とりあえず防水のやつ」で失敗しないために、ひととおり押さえておきましょう。
Contents
なぜ海の近くの監視カメラは早く傷むのか
塩分の何が怖いかというと、金属を錆びさせることと、いつまでも乾かないことです。
潮風に乗ってきた塩の粒は、カメラの筐体やネジ、ブラケットにうっすら積もります。塩は空気中の水分を吸い込む性質があるので、雨が降っていなくても表面はしっとり濡れた状態が続きます。乾かない + 塩、という組み合わせは、金属にとって最悪です。塗装の小さな傷や、ネジの隙間からじわじわ腐食が始まり、やがて筐体の内部にまで及びます。
レンズ前のカバー(ドームカバーや前面ガラス)に塩が固着すれば、そこだけ白く曇って映像がにじみます。拭いても取れにくく、夜は照明やヘッドライトが乱反射して、ますます見えなくなる。これが「数年で映らなくなる」の正体です。
ポイントは、ふつうの屋外カメラ=防水(IP66など)であっても、塩には別の備えが要るということ。防水は「水の侵入を防ぐ」規格であって、「塩で錆びない」ことを保証するものではないからです。だからこそ、海の近くでは「防水かどうか」ではなく「塩害にどこまで耐えるか」で選ぶ必要があります。
「耐塩害」と「耐重塩害」は別もの——あなたの現場はどっち?

カメラのカタログを見ると、「耐塩害」と「耐重塩害」という、よく似た2つの言葉が出てきます。これは別ものです。ざっくり言えば、塩のきつさのレベルが違うと考えてください。
目安になるのが、海岸からの距離です。一般的な基準では、おおよそ次のように分けられます。
| 耐塩害 | 耐重塩害 | |
|---|---|---|
| 目安の環境 | 海岸から約200m〜20km/一般地域より塩分が多い場所 | 海岸から約0〜200m/潮風が直接当たる沿岸部・港湾・漁港。融雪剤を撒く道路のトンネル内もここに相当 |
| 主な対策 | 耐食素材 + 塗装 | 耐食処理した素材に、耐食性塗料・耐候性塗料を重ね塗り(ISO14993準拠などの強化仕様) |
| 向いている現場 | 沿岸から少し離れた市街地・郊外 | 海のすぐそば、岸壁、潮をかぶる場所、融雪剤の多い山間トンネル |
注意したいのは、融雪剤です。塩化カルシウムなどの融雪剤を撒く地域は、内陸でも「塩害地域」に相当し、そのトンネル内は「重塩害地域」に当たります。「海から遠いから関係ない」と思っていた山沿いの道路が、実は重塩害だった、というのはよくある話です。
もう一つ。上の距離はあくまで目安です。実際には、地形や風向き、潮をかぶるかどうかで体感の塩のきつさは変わります。岬の先端や、防波堤のすぐ内側など、距離以上に過酷な場所もあります。迷ったら、ワンランク上(耐重塩害)に寄せておくほうが、後悔は少ないです。
カメラは何で「塩」に耐えているのか
「耐重塩害」と書かれたカメラは、見た目はふつうのカメラと変わりません。違いは中身というより、素材と表面処理にあります。
i-PROの耐重塩害モデルは、耐食処理を施した素材に、耐食性塗料・耐候性塗料を重ね塗りすることで、ISO14993準拠の耐塩害仕様を実現しています。ISO14993は、塩水噴霧・乾燥・湿潤を繰り返して腐食への強さを評価する国際的な試験方法で、「塩に長期間さらされても大丈夫か」を裏づける根拠になります。
これに加えて、屋外カメラの基本として IP66(粉じんが入らず、強い噴流の水にも耐える)という防じん・防水性能があります。「IP66で防水はOK、さらにISO14993で塩にも強い」この二段構えが、海の近くで長く使えるカメラの条件です。選ぶときは、「IP66か」だけで満足せず、「耐重塩害(ISO14993準拠)か」まで確認してください。
塩害対策でおすすめの監視カメラ
ここからは、塩害地で実際に選ばれている i-PRO の耐重塩害カメラを、見たい範囲別に紹介します。「どれが一番」ではなく、現場に合うタイプを選ぶのがコツです。
① WV-X4576LS/WV-X4556LS(全方位・エッジAI)
1台で360度を見渡す、耐重塩害の全方位AIカメラ

岸壁・ヤード・駐車場のように「広い範囲を、できるだけ少ない台数で」見たい場所に向くのが全方位カメラです。WV-X4576LS(12MP)/WV-X4556LS(5MP)は、耐重塩害仕様でありながらエッジAI(カメラ本体でのAI処理)を備え、人や車をAIで見分けながら塩害環境でも長く使えます。沿岸の施設をこれから本格的に見える化したい現場の、主役になる1台です。
② WV-S1536LNS(ボックス/ハウジング一体)
出入口を狙い撃つ、耐重塩害のハウジング一体カメラ

ゲートや出入口のように「一点をしっかり捉えたい」場所には、レンズを向けて使うボックス型が向きます。WV-S1536LNSは、耐重塩害(ISO14993準拠)の屋外ハウジング一体モデル。遠くの人や車のナンバーなど、はっきり残したい対象を狙うのに適しています。
④ WV-X67300-Z4L4(エアロPTZ/高耐久)
雨・風・潮に最も強い、高速回転のエアロPTZ

塩害に加えて、強風・豪雨も厳しい——そんな最も過酷な現場のためのタイプが「エアロPTZ」です。WV-X67300-Z4L4は、ドーム部を高速回転させて水滴や汚れを振り飛ばす構造で、IP66/IP68の防水に加え、風速75m/sでも動作、90m/sでも壊れないという耐久性を持ちます。
塩害対策でおすすめの周辺機器・オプション機器
カメラ本体を耐重塩害にしても、それを支える周りの部材が塩にやられてしまえば、結局は同じことです。見落とされがちな「カメラ以外」の塩害対策を、具体的な製品名・型番まで挙げておきます。
金具
カメラを支える金具も、本体と同じくらい塩に強くしておきたい部分です。i-PRO純正なら、直径80〜200mmの丸型ポールに取り付けるポール取付金具 WV-QPL500WUXや、配線をまとめるジャンクションボックス WV-QJB500WUXを、屋外カメラと組み合わせて使えます。塩害がとくに厳しい現場では、これらに加えてボルト・アンカー類をSUS316相当(モリブデン入りで塩化物に強い)の耐食グレードで揃えると安心です。本体が耐重塩害でも、金具が錆びればガタつきや落下の原因になります。
雷対策
海沿いや高所・見晴らしのよい場所は、誘導雷のリスクが高めです。PoEカメラはLANケーブルが雷の侵入口になるため、PoE対応のサージプロテクタをカメラの近くに入れておくと、落雷一発による全損を避けられます。代表的な製品としては次のようなものがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 海から何メートルから「耐重塩害」が必要ですか? A. 一般的な目安は、海岸から約0〜200mが耐重塩害、約200m〜20kmが耐塩害です。ただし距離はあくまで目安で、地形・風向き・潮をかぶるかどうかで変わります。岬の先端や防波堤の内側など、距離以上に過酷な場所もあるため、迷ったら耐重塩害に寄せるのが無難です。
Q. 内陸なら塩害は気にしなくていい? A. いいえ。冬に融雪剤(塩化カルシウムなど)を撒く道路沿いは「塩害地域」に当たり、そのトンネル内は重塩害地域に相当します。海から遠い山間部でも対策が要るケースがあります。
Q. IP66の防水カメラなら塩害も大丈夫では? A. 別ものです。IP66は水やほこりの侵入を防ぐ規格で、塩による腐食への強さは保証しません。塩害地では、IP66に加えて耐重塩害(ISO14993準拠)かどうかを確認してください。
Q. いま付いている塩害非対応のカメラは、どうすれば? A. すでに曇り・錆が出ているなら、早めの交換をおすすめします。現地の塩のきつさ(海岸距離・風向き・融雪剤の有無)を見たうえで、適切な耐塩害レベルの機種と周辺部材をご提案できます。
当社のAIカメラ事業について
塩害地のカメラ選びは、「どの型番か」だけでなく、「その現場が耐塩害なのか耐重塩害なのか」「金具や収納など周辺まで守れているか」「付けたあと誰が手早く保守するのか」までを含めて考えると、失敗が減ります。
当社は、映像ソリューションに30年、3,000社以上の現場とご一緒してきました。うちの現場は耐塩害でいいのか、耐重塩害が要るのか。そこから一緒に確かめます。AIカメラ事業を立ち上げましたので、塩害地のカメラでお困りでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。








